国家戦略検定 食の6次産業化プロデューサーを知っていますか?

「食の6 次産業化プロデューサー」誕生のいきさつ

国家戦略検定“食の6次産業化プロデューサー”の認定が始まっている。6次産業化の国家検定はなぜ必要となってきたのか。私は平成23年に政府の実践キャリア・アップ戦略の下部委員会である食の6次産業化プロデューサーワーキンググループに召集され、後に国家戦略検定となる「食の6次産業化プロデューサー」の教育カリキュラムの起草を手伝うことになった。当時、委員会では「キャリア」や「能力」がより評価される社会の実現を目指す制度を作ろうとのねらいを定め、イギリスで雇用創出効果を発揮していたNVQ制度(National Vocational Qualification)をモデルにした制度づくりの協議を開始した。一方、食産業も多くの課題を抱えていた。農業を強い産業にするためには大量輸送が前提となる系統出荷と市場による値決めが必ずしも農家個々の豊かさにつながっていないこと。農家個々が地域資源に磨きをかけ6次産業化で付加価値を生みだし、もう少し強みを発揮すべきとの議論が盛り上がってきていたこと。和食が世界遺産への認定されるものの食産業の総付加価値額が人口減少の中で減少傾向にあることなどがあり、6次産業化の資格の国家検定化により、優秀な人材の成長分野への誘導を図りたいと議論は進んだ。また、地方を中心に高齢化、人口減少による疲弊を食い止めるためには地域のお金を外に逃がさない資金の域内循環の構築が必要でその専門的な担い手の必要性も語られていた。

プロデューサー育成のねらいとターゲットは

定員割れで統廃合が検討されている高校は多い。市町村立の小中学校と違い県立高校など運営主体が違うのでなかなか地域の要請は届きにくいが、地域住民が早めに問題意識を醸成し危機感をもって高校存続を考えていかないと、あっというまに統廃合が決まってしまう。高校消滅による地域力の低下は否めない。人口減少による自治体の存続は更なる危機に直面する。

内閣府で行われた食の6次産業化プロデューサーワーキンググループでは、食の6次産業化プロデューサーの育成のねらいとターゲットを以下のように述べている。

日本の「食」については、「世界一と称されるおいしさ」「徹底した安全と衛生管理」といった様々なポテンシャルがあるものの、現実には、生産者の所得の減少、後継者の不足や、「食」を支える地域経済の悪化、雇用機会の減少といった様々な課題に直面している。これらの課題を解決するためには、「食」の付加価値の向上や生産性の向上を強固な「経営力」のもとに進める、「食の6次産業化」のプロ人材(=「食の6次産業化プロデューサー」)を育成することが急務である。このような人材の育成により、食に関わる様々なプレイヤーへのメリット、すなわち、農林漁業者にとっては、競争力の強化や所得の向上、食品製造業者にとっては、原材料の安定化、小売外食産業にとっては、高付加価値化・差別化等が期待される。また、食の6次産業化に関わる人材の雇用機会の創出や、6次産業化が進むことによる派生的雇用機会の創出といった、地域への貢献も期待される。「食の6次産業化」のプロ人材の育成に当たって、プロ人材に最も近い位置(=コア・ターゲット)にいるのは、現在すでに食産業に従事しているプレイヤー(農林水産業者、食品製造・加工業者、流通・小売・飲食業者やこれらの法人で働くスタッフ)と、これらの支援者(コンサルタント、営農指導員等)である。また、キャリア段位制度は、キャリア・パスや成功モデルを見せることにより若者等の参入を促進するといった意義を持つものである。「食の6次産業化プロデューサー」分野についても、学生や求職者に対して、「食の6次産業化」への従事を促すとともに、産業全体の規模を拡大していくために、「食」の周辺分野からの新規参入を促す仕組みとすることが重要である。

どんな仕組みになっているのか

国家戦略検定“食の6次産業化プロデューサー”では、エントリーレベルのレベル1からトッププロのレベル7まで、7段階でレベル認定を行っており、申請者の現状に近いレベルから取り組み、ステップアップしていくこと仕組みになっている。

レベル1は職業準備教育を受けた段階と位置づけられており、農業高校、食産業分野に入ってきた方たちが対象である。6次産業化の基礎及び食品安全、衛生管理等を理解する必要があり、現場での実習、視察による経験で修了できるプログラムとなっている。レベル7はトップ・プロフェッショナル。組織内外で後進を育成、他の農家に対して「食の6次産業化」の手法・戦略を指導と位置づけられている。またレベル4がプロレベルであり、段位認定委員会がプロ人材として認定をこのレベルで開始している。レベル4は一人前の仕事ができる段階で食の6次産業化に関する経験や実績があり、事業化、マネジメント、コンサルティングなどの成果を出している人材と位置づけている。このレベル4の取得を農水省は推奨し、農水省の派遣事業である6次産業化プランナーに対して認定取得を勧めている。

注目したいレベル1

こうした7段階の段位制度がある中で、私はレベル1が興味深い。TPPの行方はいまだ明らかではないものの農業の競争力向上は必須の課題である。競争力を助長できる他者の存在がクローズアップされている中で、特に食産業に関わる大学や農業系高校などの学生や生徒、食品産業に働く入門者あるいは食産業に興味を抱く一般の方を対象とした食の6次産業化プロデューサーレベル1のすそ野拡大は特に重要であると考えている。そしてこのレベル1の教育認証機関として全国の農業高校や大学が名乗りを上げている。シラバスが段位認定委員会で認められると独自に開講する研修会でレベル1の認証資格を得る講義が開催できる。この教育機関として農業高校等の他に地方自治体や商店街組合、温泉組合、観光協会などの団体の申請が考えられる。こうした教育プログラムがまさに観光振興、地域人材の育成、高校の魅力化等の地域活性化に貢献する時代なのだ。

インターネットによる教科書の無償配布

国家戦略検定 食の6次産業化プロデューサー入門(レベル1講習用教本)はイング総合計画株式会社サイトで PDF版にて無償配布します。必要部数を印刷の上、ファイルに綴じるなどしてご活用ください。私はこれまで制度設計、制度の認定に関わってきたので制度の普及支援を目的としてプログラムの副教材をイメージして作成してみました。ご参考にしていただければ幸甚です。

国家戦略検定 食の6次産業化プロデューサー入門(レベル 1講習用教本)

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