地方創生戦略

地方創生戦略が国からのトップダウンであり地方分権の流れから反するのではないかとの指摘がある。しかし、いずれ消滅の可能性が想定される自治体があり、そうしないために地域自らが危機意識を持って戦略を考えることは重要な試みと考えている。特に地域の“能力構築競争”をテーマとして考えてきたためか地域間競争に違和感はない。格差が拡大するのだろうか。やる気のない自治体があればそれは拡大するのだろう。しかし、格差が拡大しないように縁辺部から、この地方創生戦略の答えを積極的に打ち返せないかと考えている。条件不利な状況のなか、厳しい地域課題に直面し、その問題を解決してこそ、日本をリードするモデルが生まれる。地方創生戦略を考える契機を作った島根県海士町の隠岐島前高校の取組はまさにそんな現場から生まれた。成長はいつも縁辺部から、条件不利地の問題意識から生まれる。

日本はコンパクトなまちづくりを進めようとしている。縁辺部は、無居住化しこのまま畳み込まれてしまうのだろうか。人口減少が進み、定員に達しない学校の統廃合も進んでいる。しかし、統廃合の対象となる高校がある地域では地域力維持を図るため、高校の存続を望む声も大きい。北海道立から市立に移管し、1クラスのみの調理科に特化し、生き残りを果たした三笠高校の事例をみると、「コンパクト化」というよりは「ダウンサイジング」の中で“変異”が起きている。地域が必要と考えるものをどう存続するのかを地域自らが考え決断することが、今後増えてくるのだろうと思う。地方創生戦略は、生き残りを如何に果たすのかの決断を明確にする千載一遇のチャンスなのではないか。

地方創生戦略でいう戦略とは果たして何だろうか。戦略とは、人口減少に歯止めをかけるという地方創生の目標達成のために、施策を総合的、多層的に組み上げ、地域が持っている競争力を明確化するものだろう。このために市町村別に人口の推移を認識し、政策的な人口誘導を図るために競争力のある、他の地域と異なる計画を立案する必要かある。市町村は柔道でいう「組手」を少し考えないといけない。今までの縦割りの議論を排除し、プロジェクトの横断的な展開を模索することが重要である。施策に関する専門的な見地と横断的なマネージメントが地方創生戦略策定に問われるだろう。強いものへのより強い投資だけでは真の成長は果たされない。草の根からの地方創成の再定義が重要な任務であり、日本の縁辺部から次の成長が始まることを肝に銘じて地方創生戦略に取り組みたい。