人口26人、平均83歳の離島に新しい息吹毎日フォーラム誌(2014年2月号)

NPO法人アクションアイランド代表理事 矢野都林

「サイクリストの聖地」として脚光を浴びる橋梁でつながったしまなみ海道の周辺には、生活支援サービスを必要とする有人離島が多数存在する。愛媛県今治市吉海町の沖合の津島もそのひとつだ。人口26人、世帯数18世帯、平均年齢83歳のこの離島は限界集落であり、生活を支える定期航路は1日3往復のみと少なく、総合的な生活支援を必要としている。

愛媛県、広島県共催の島博覧会「しまのわ2014」の開催が予定され、吉海地区で活動する私たちのNPO法人もそれに参加するための検討に入り、沖合にある離島・津島でのイベント開催を協議していた。そんなタイミングに総務省の生活支援に関する調査事業の話があり、観光客誘致と生活支援を兼ねて事業を推進できないかという話となった。私は津島を生活支援という切り口で考えることなど全くなかったが、こうした問題提起をいただき、メンバーたちから次から次へと事業提案があり、それをどんどん実行していこうという話となった。瀬戸内の冬の海は強い西風で荒波が立つ。年末までが締め切りと位置づけ、やれることはやろうとみんなで活動を始めた。私もせっかくの機会と思い元トラック運転手の杵柄と一念発起し、船の操縦免許を取得、小さいながら中古の船を購入し活動を始めた。

高齢化する住民が観光客を受け入れることに問題はないのかと不安だったが、最初のイベントで住民として協力できる方、参加できる方を募り、みんなで事業を進めることができた。その後の学生たちが実施したアンケートで、住民全員が観光客や学生の受け入れを歓迎していることが分かり、事業は順風満帆に進んだ。昨年は秋祭りが29年ぶりに復活した。150人もの島外者が島を訪れてくれた。30年前に子どもだった世代がその子供たちを連れて帰ってきてくれた。30年以上も前に島の子供たちのためにと作った神輿が復活し、孫たちの世代が神輿を担いだ。

地域住民や大学生たちも活躍してくれた。秋祭りを前に境内や参道の掃除、雑草取りに精を出してくれた。砂浜清掃グループや子供たちの訪問、瀬戸内クルージングの寄港地、婚活の舞台と津島は一躍観光の表舞台へと躍り出た。お金を払ってでもボランティアに参加したいという若者たちの存在にただただ驚くばかりだ。住民も買い物支援などのいわゆる生活支援を望まず、元気な来訪者との時間を楽しむことを望んでいることが分かった。 人口減少の中で縁辺部の集落は今後、無居住地域として放置されるのだろうか。離島の生活支援を今後どうしていくのか。12市町村が広域合併した今治市は果たして縁辺部まで目線が行き届くことができるか。我々住民はいかにして地域の息吹を維持し、次世代にそのスピリッツを伝えていくことができるだろうか。そんなことを考えさせられる毎日だった。

われらは村上水軍の末裔。「船に乗るより潮に乗れ」とはこの地域に伝わることわざだ。生活支援を考える船は出航したところで潮目はまだ見えていない。皆様、どうぞご声援をよろしくお願いします。

津島/餅つき
津島/餅つき
津島/餅つき
津島/餅つき

観光客は船代を支払い離島津島にやってきて、もち米代金を支払い島民とともに餅をつき分け合った。撤収するも観光客。そんな生活支援がはじまっている。