高知県四万十町の仁井田米がコンテストで日本一(高知新聞2015年12月)
米どころ高知県のブランド確立を考える
静岡県沼津市で開催された第12回お米日本一コンテスト in しずおか(米コン2015)の会場をこれから米ブランド化に挑戦する地域の方々と訪問した。このコンテストは、毎年全国各地から集まった新米の中から「日本一おいしいお米」を決定するものである。予選では600点を超える応募銘柄を食味評価機器で測定し上位75銘柄を決定し、最終審査では食味官能試験による審査を実施するものだ。最終審査の初日に75銘柄を30銘柄にしぼり、2日目にトーナメント方式で最高金賞(6銘柄)の受賞銘柄を決定し、さらにその中から優勝となる特別最高金賞を決定するコンテストである。
今年度は高知県四万十町の仁井田米が特別最高金賞を獲得、高知県本山町の土佐天空の郷米が金賞を受賞した。私は第8回コンテスト時(米コン2010)に高知県本山町役場企画室に赴任しており、土佐天空の郷が誕生する現場にいた。また第12回では高知県四万十町の仁井田米が特別最高金賞を受賞する会場でその推移を見守ることができた。このため高知県産米の躍進の現場を話せる数少ない外部者ではないか。第8回コンテスト時は夏の熱波でコシヒカリの出来がよくないと聞き、第12回の今回は7月の長雨、8月の乾燥で不作と聞いた。両大会で高知県の“にこまる”が特別最高金賞を受賞。私は米の品質向上や技術革新に関する知識を持ち合わせていないが、このコンテストの結果からみると、夏の熱波や乾燥、長雨などの天候不順が起きると食味コンテストでコシヒカリは弱いのではないか。今年は全国各地の農家が天候不順で不作と嘆いていたことから、コシヒカリが苦戦しにこまるが優勝するのではないかと当初から会場で話していた。仁井田米は土佐天空の郷が特別最高金賞を勝ち取った翌年から、産地全体で“にこまる”を栽培したという迅速な対応が奏功したと考えている。出品者が特別最高金賞を勝ち取るためには、通常の天候に恵まれた時はコシヒカリを出品し、異常気象に見舞われた時は“にこまる”を出品すればトーナメントで有利に働くのではないかと素人なりに思う。しかし、高知県産米の特別最高金賞が続くのは天候だけではない実力を高知県が持っている証拠である。高知県にとっては高付加価値をつけて販売を伸ばすチャンス到来でもある。TPP締結による米の価格の下落が懸念される中、高知県が米どころとしてのブランドを確立し、農家所得の向上、米価格の底上げを図るチャンスを迎えている。なによりも土佐天空の郷米の10キロ7600円という取引価格は魅力的であり、仁井田米の取引価格も今後大きく上昇するだろう。
米どころとしてゆるぎないポジションを確立するためにも、土佐天空の郷米の嶺北、吉野川流域エリア、仁井田米の四万十川流域エリアでの広域生産を実現できないものかと考える。広域エリアのブランド化には、農協と農業公社との確執や農協と米店との調整に壁があることは承知するが、ここは腹を割って話し合ってみてはどうかと思う。地方創生戦略は地域連携がポイントである。そこにお金をつけると国は言っている。高知県の2つの全国に誇れるブランド米のそれぞれの産地の広域化、栽培技術の広域展開、販売戦略の一体的な全国展開を県主導による地方創生戦略で議論してみてはと思う。
高知県四万十町の仁井田米がコンテストで日本一
(高知新聞2015年12月)
有機肥料使い、栽培法統一
高知県高岡郡四万十町窪川地域で作られる仁井田米がこのほど、静岡県で開かれた「第12回お米日本一コンテスト」で最高位に当たる実行委員会会長賞を受賞し、日本一に輝いた。品種は「にこまる」で、四万十町仁井田の米販売店「宮内商店」(宮内重延社長)の稲作部会に所属する片岡源造さん(66)=仁井田=が出品した。高知県の出品者が「お米日本一コンテスト」で日本一になったのは、2010年の長岡郡本山町の「土佐天空の郷(さと)」に続き2回目。
仁井田米は、昼夜の寒暖差が大きい四万十町の高南台地で栽培される米の総称。品種は「ヒノヒカリ」が主体だが、高温障害に強い「にこまる」の作付けも近年増えている。 宮内商店の稲作部会は、2009年から山形県の米作り名人、遠藤五一さん(57)の技術指導を受けて、にこまるを栽培。小魚の粉末などを混ぜた有機肥料やミネラル粒を元肥に使い、現在、片岡さんを含めて74人が計127ヘクタールで生産している。
栽培法の統一により、おいしさを機器で測定した食味値(100点満点)が90点台のコメを安定的に収穫できるようになり、各地のコンテストで連年上位に入賞している。
「お米日本一コンテスト」は静岡県などでつくる実行委員会の主催。今回は39都道府県から過去最多の587点が出品され、食味値の上位75品が予選を通過した。
本選は、お米マイスターら専門家15人が炊いたコメを食べ比べて投票する4回戦のトーナメント形式で行われた。決勝には6品が残り、片岡さんの「にこまる」が最も多く票を集めた。
片岡さんは「今年は7月に雨が多く、栽培が難しかった。まだ実感が湧かないが、日本一は励みになる」と喜んでいた。宮内社長は「7年間、農家と一緒に栽培してきて、仁井田米が全国に知られてきた。研究を続け、よりおいしい米を作りたい」と話している。
このほかの高知県内勢では「土佐天空の郷」を栽培する本山町の「土佐天空の郷振興会」も「にこまる」を出品。上位12品に選ばれ、コシヒカリ以外の優秀な品種に贈られる品種賞を受賞した。