時事通信社Agrio誌 斉藤俊幸の地方創生塾

2004年当時、小泉純一郎政権で始まった地域再生事業では、総務省が始めた「地域再生マネージャー事業」と厚生労働省の「雇用創造事業(パッケージ事業)」が成功施策と言われた。地域再生マネージャー事業は03年、当時の麻生太郎総務相が発表した施策の中で、地域に赴任し、成功報酬制で活動せよと定められた事業だ。私は04年から現在までの11年間、地域に単身赴任を続け、地域課題に取り組んできた。炭鉱、漁村、山間地、離島と厳しい地域課題に直面し、短期間に課題解決の糸口を見出さなければならず、住民の皆さんと現場で侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論を積み上げてきた。

三池炭鉱のあった熊本県荒尾市では高齢者が1キロ先のショッピングモールまで買い物に行かなくてはならない状況を解決しようと、徒歩圏内マーケットを市内各地に作ったが、後に買い物難民問題を解決する先駆け的な事例として経済産業省で大きく取り上げられることになった。農産加工による地域内資金循環を支援する取り組みが得意で、この縁で内閣府において国家検定となった食の6次産業化プロデューサーの段位認定やカリキュラム起草委員会を5年間務めさせていただいた。単身赴任の職能は、地域おこし協力隊の制度設計へとつながり、その委員会にも参加した。

補助金をもらうことには問題があるとの議論もある。補助金をもらい続け弱体化する組織もたくさんあるからだ。2000年に国の補助事業の交付対象に任意グループ等が入り、合わせてNPOの法人化も進んだ。いわゆる「集中と選択」、やる気のある組織に資金を集中的に投下する競争的資金の登場だった。地域を担う組織が事業の初動期に補助金を活用することは事業主体が資金循環を構築し、自立してゆくために有効だ。また、計画書を書くこと自体は悪いことではない。皆で議論を進め、理論化することで地域や組織が進むべき方向性が見えてくるからだ。

地域再生事業から11年。いま、地方創生戦略が始まろうとしている。果たしてわれわれはどう対処すべきか。地方創生戦略と地域再生事業は別々な制度だが、双方を俯瞰して考えることが必要だ。農林水産業に関わる補助事業、構造改革特区、外部人材、国家検定に関して10回シリーズで書こうと思う。農水省以外でも活用できる農業振興策と事例を追ってみたいと思う。