日本ではじめての自立型まちなか研究室追浜こみゅに亭(2013年6月)
日本ではじめての商店街立地の自立型まちなか研究室。研究室内にはワイナリーがあり、1ヶ月に1回、住民と商店主が中心となりワインを仕込みその収益でまちづくりを進めている。2004年に開設し、10 年目を迎える。
2003年、関東学院大学工学部土木学科教授であった昌子住江先生が追浜商店街の人たちからまちづくりに協力してほしいとの依頼を受けた。前年度から昌子先生と私は「まちづくり・起業入門ゼミ」を行っており、2003年度後期から追浜商店街を舞台とした学生の調査・研究活動を開始した。後期末には調査・研究が終わり報告書を持って活動報告をしたところ、「市や県が作った報告書はたくさんある。しかしこれらの計画はまったく実現していない。あなたたちもこれを作ってこの商店街から離れてしまうのですか」との商店街の人たちの問いかけに昌子先生は「まちなか研究室」を作ろうと呼びかける。1997年、関西学院大学の片寄俊英教授が兵庫県三田市のほんまち商店街で開設したのが日本で最初のまちなか研究室。このほんまち商店街にある「ほんまちラボ」を見習ったまちなか研究室をここ横須賀市追浜商店街に作ろうと昌子先生は呼びかけた。
2004年10月にまちなか研究室追浜こみゅに亭は開設される。大学の研究室が商店街に進出することは昨今珍しくなくなったが、当時は数少ない事例であった。しかし、商店街の人たちは考え込んでしまう。毎月のまちなか研究室の家賃15万円をどう支払うのか。そこで商店街にワイナリーを作ろう!まちづくり・起業入門ゼミの報告書の提案の中に、海洋深層水を利用したワイナリーがあった。商店街の人たちと住民が1ヶ月に一回集まり、ボランティアでワインを仕込む。その収益でまちづくりをしよう。そんな仕組みを持った日本ではじめての自立型のまちなか研究室が追浜こみゅに亭が誕生したのであった。
「追浜こみゅに亭&ワイナリー」は、大学の演習や研究室の学生の地元研究の拠点、住民の独自企画の研究会やまちづくりの会合に利用することができる。収益はワイナリーの他、地域連携の試みとして、山形県白鷹町の農産品を入れた。なぜ白鷹町かと言えば、独自の農法で頑張る農家の支援をしたいという声があったからであるが、商店街の八百屋さんと品物が競合しないための配慮もしている。これらの収入により、施設の維持管理を図ろうとした。
なお2007年からはもう1店舗借り活動を拡大。ワイナリーをさらに広いスペースに移転させるとともに「こみゅに亭カフェ」として醸造所のとなりの空き店舗を借り、現在もまちづくり活動を続けている。これは、商店街に一息つく場がほしいという利用者の要望に応えたものだが、そのために賃貸料はほぼ倍になった。 ワインづくりには醸造器の購入等もあるので、初期投資のためとPRを兼ねてワインのサポーター制度を設け、一口1万円でまちの方々に支援してもらった。かなり話題を呼んで300口ほど集まった。
ワインの醸造は商店街と地元住民の有志が担っている。住民有志の多くは、定年退職で地元に戻った方々である。「一緒にワインを造りませんか」というチラシを配布したところ、これを見て退職後何をしようかと迷っていた方々が集まって来たのである。みなさんボランティアで醸造している。素人ばかりだが、ワイン醸造を毎月楽しんでいる。
追浜コミュニ亭は1か月に1回ボランティアでワインを仕込みその収益でまちづくりをする。