講義ブログリサーチクエスチョン

農村集落撤退という地域政策に疑問である。人口減少社会に入り、全国各地の集落戸数は減少傾向にあり、存続危機に直面している。しかし、集落存続に向けた対策は打たれていない。戸数が9戸以下の集落は消滅危惧集落と農水省が定義している。長崎県五島市の2次離島の久賀島にある細石流(ざざれ)集落では、多くの住民が集団移住する中、2世帯が残るのみとなったが、畜産業の大規模化に成功し、集落消滅の回避ができている。そこには、畜産農家への助成事業、農家を対象とした融資、農用地の大規模拡張整備事業、若い担い手の存在などによる地域再生の取組みがある。

資源を持たないものはどうやって集落の消滅危機を克服するのか。そこには複合的な地域戦略が必要であることを示している。本研究は、畜産業が集落存続や耕作放棄地解消の有力な手段であることを踏まえ、畜産業を通した消滅危機の集落再生を図るための手法を解明する。

畜産業は、「競争」のみではなく、「非競争」の側面を有している。これは、新たな地域活性化政策が、「競争」のみではなく、「非競争」が必要となってきていることに符合する。本研究は畜産業で生まれている現象に着目し、地域活性化事業がいかに問題を克服し、再生するかという 論理構造を明らかにすることを目指す。これにより、危機に直面した地域集落の自立、経営人材の必要性、非競争な地域活性化政策等の研究領域のあり方を導き出すことを目的とする。

 

なぜ環境負荷が高い畜産業を地域活性化研究の対象とするのか。

食料生産で生まれる温暖化ガスは世界の排出量の約4分の1を占めると国連は警告している。牛のげっぷや家畜のフン尿によるメタンガスの排出が問題と指摘されている。しかし、問題なのは飼料の輸入などの大量生産による環境負荷の拡大である。畜産業自体は問題ではない。畜産業における環境負荷への対応は、地域の持続性や生活環境の向上へとつながり、ひいては環境負荷のない産品産出へとつながる。これは価格へと反映され、地域の付加価値醸成へとつながるために大切である。